Nara de Rock'n'Roll 3rd

京都の大学生の独り言……

厭世居士名歌後拾遺

 

 

 

   炭酸の抜けた二つのレモンサワーのみ雄弁に恋を語りき

 

 

 

   帰り道つい白熱せり長電話こたつのなかの右手かじかむ

 

 

 

   大学に木枯らしが吹き君の住む東京では夜雨が降るとか

 

 

 

   研究室「キライ」と言い切るセンパイの意志はちゃんと受け継いでますよ

 

 

 

 

厭世居士 瑣事に追われ自分の実態すら追放された空蝉と化す

厭世居士名歌七選

 

 

   君の街あたりを眺めて待つ夕べ昨日仕掛けた時限爆弾

 

 

 

   鞄より見つけし土産図書館にオレンジ味の海が広がる

 

 

 

   手を握り四条に連れて往きたれば瞳ネオンの宝石になる

 

 

 

   息詰まる本棚の色なめらかに増えていくのがよかったりする

 

 

 

   曲終わり雨の強さに驚いたあの日未来は僕らの手の中

 

 

 

   16の太宰片手に人生を悲観する吾を笑う姉哉

 

 

 

   松山の端辺の宿のじいさんよ勘弁してくれ犬が腰振る

 

 

 

厭世居士   とうとう神経が参ってしまった夜  閉館間際の図書館にて

厭世居士恋愛名歌拾遺

 

 

   文学部棟から法学部まで君の足跡たどりなどする夕べ

 

 

 

   猫が好きかわいいとかいうけど実は興味ないでしょそこもかわいい

 

 

 

   照れること小声で言って「ウソ」と言う仕草愛らし酔いどれの君

 

 

 

厭世居士

 

附属図書館の3階にて  居もせぬ待ち人を待つ

厭世居士恋愛名歌五選

 

 

   半袖の君が勧めたあの映画今観ているよもう遅いけど

 

 

 

   自我よりも胸の痛みが先に来る土曜の目覚め空は明るし

 

 

 

 

   帰り道思い出す君静止画は笑顔の君と悲しそうな君

 

 

 

 

   繰り返し字面をなぞる細い指ページ繰る吾の視線とどまる

 

 

 

 

   たまにくるふとしたときの「教えない」それだけで狂う君のいじわる

 

 

 

 

厭世居士    

 

発表準備から逃げ続けて2日前になってしまった朝、自室のベッドにて

YouTubeで最近見た面白かった動画

【オトナブルー替え歌】新しい漫協のリーダーズ 『大御所ブルー』

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中年が団塊世代をいじってる構図が面白い。絶妙な哀愁を感じます。

 

 

【バックビート】日本人は何がダメなのか★Walk comparison and 〝Backbeat〟 between President Obama and Prime Minister Abe★

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日本人はバックビートが根本的に習得出来ない(らしい)です。難解で完全には理解していませんが、アジアと欧米の音楽性の違いを歩き方の違いから考察しており、興味深い内容でした。

 

 

 

頼惟勤先生の素読の見本

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昭和に活躍した中国学の泰斗、頼惟勤氏による素読を聞くことが出来ます。氏は「日本外史」を書いた江戸時代の歴史学者頼山陽の6代目の子孫で、漢学における名家中の名家のお生まれです。現代では伝統が途切れてしまった素読という学習法が一体どのようなものだったのかを知れる貴重な音声資料です。5:00くらい~。なぜサムネが地獄のミサワなのかは謎です。

 

 

「サラリーマンは電気鮪の夢を見るか?」 監督:上田誠ヨーロッパ企画の26世紀フォックス)

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実は京都発の劇団、ヨーロッパ企画のショートムービー。コミカルですが良質なSFを手軽に楽しめます。他にも短いSFを何編か上げているので気に入ったら是非探ってみてください。これを無料で観れるのは贅沢だと思います。

 

 

すぐにわかる学術書の読み方 ~大量の本にどう向き合うか〜

youtu.be京大の人文科学研究所がおそらく学内向けに上げた動画ですが、どうやら学外者にも人気のようです。これを観て、未だ理系から舐められがちな文系の学問の実態をもっと多くの人に知ってほしいですね。一流の学者はやっぱり本をめちゃめちゃ読んでるし、実は読んでなかったりする、っていう逆説的な動画です。

 

 

RADIO SAKAMOTO 陰謀論に対する処方箋【20210704OA 斎藤幸平 國分功一郎

youtu.be斉藤幸平と国分功一郎の対談です。若いうちに一つのイデオロギー固執すると頑迷な大人になりやすいとはわかっていますが、斎藤氏の言う「脱成長コミュニズム」が人類が目指すべき正しい道筋だとは思うんですよね。冷戦集結=歴史の終わりとするよりも、「コモンと環境を蝕む資本への闘い」を大きな物語に据えて、現実問題として何が実行可能かを議論していく段階に入っていると思っています。

 

 

【SOUL'd OUT第6弾】Christopher Columbus!ってなんなの?Cozmic Travel 解説【レベル:SR】

youtu.be最近SOUL'd OUTがマイブームなんです。もともと難解で耳障りの良い単語が無秩序に並ぶ歌詞が大好物なんですが、ちゃんと意味のある歌詞だったんですね。しかも結構教養を試されていると。英語の言い回しも学べて一石二鳥の動画です。

 

 

白井聡 ニッポンの正体】 資本に食われる大学 ~自治と「コモン」を取り戻せ~

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一見トンデモ感のあるサムネですが、白井聡はちゃんとした優秀な学者です。要約すると「いまの大学がつまらんのは何故か→大学がお洒落で綺麗でキラキラなアミューズメント施設になっているから」という主張です。自分がいま通っている京大はまだ汚さや杜撰さ(つまり非管理=自治)がかろうじて残っている(とされる)大学なので比較的生きやすいんですが、前通っていた早稲田は確かにつまらなかったですね。白井氏は早稲田出身なので「バンカラの象徴」から「キラキラの象徴」へと堕ちた母校が特に許せないのでしょう。動画ではとてつもない熱量を感じます。

動画内で語られる「大学の汚い謎スペースの消滅→便所飯の発生」という理屈は一見大げさな気もしますが、確かに自分も早稲田に通ってるときは、恥ずかしくて一人でご飯が食べられませんでした。お洒落な男女がキャンパス内のスタバでキラキラの会話をしている傍ら、キャンパスの隅にしゃがみ込んでコンビニ飯を食っていると猛烈な劣等感に襲われるわけです。「大学ぼっち」を名乗る学生が有名私大に多いのは、キャンパスがアミューズメント化されている分、本来感じる必要の無い孤独を感じてしまうからなのです。

大学に限らず、メディアやSNSのキラキラ投稿を見るのがキツいというのは、受け手側だけの問題ではなく、社会全体が若者はかくあるべしと押しつけてしまっている面が有るんだと思います。この社会構造に対向するためには、我々若者(少なくとも被管理強化世代)としては、陰キャ/陽キャ的な構築を脱して、自分はこう生きるんだと胸を張って言えるようにならなければいけないわけです。

我々はガチガチに価値観を固定化され、それに慣れてしまった世代ですから、欧米のZ世代が主な担い手になっているLGBTクィアの生き方を尊重する風潮は、日本ではなかなか(見せかけの差別解消ではなく草の根からという意味で)受け入れがたいというのはわかります。けれども、マイノリティーの生き方を尊重することは善だ、という価値観を無理矢理にでも(それが法制度的なものであれ、同調圧力的なものであれ)広げていくことが、マジョリティーを含む若者全体が暮らしやすい世の中の建設に繫がるのだと僕は思います。

読書について

 僕と君とでは、好きな小説も年齢も読書量も感情の豊かさも頭の良さもまるで違うけれど、共通した性質をひとつ持っている。それは、本に情報やプロットや経験以上のものを見出しているところ。文字は情報伝達のための交換可能な記号なんかじゃなくて、「想像」という僕らにとってのメタバースに繋がる入場券で、そこには境界も物理法則も次元も存在しない。

 

 ただ、その世界は個人という単位で幾重もの層に分かれていて、互いに互いを認識することはできない。もし互いに認め合えるとしたら、それは政治や神話や国家になってしまうから。だから岸政彦も村上春樹もポールオースターも、君の通ってきた残像を案内するだけで、たとえ同一地点に君がいたとしても、現実世界と違って僕は君に触れることができない。想像の世界は孤独だ。

 

 君は話してくれたよね、本棚は似ているのにまるで性格の合わなかった男の存在を。僕は人文主義者だから(そしておそらく君も)生化学的事情を考慮せずあくまでも文化的に考えてしまうんだけど、たぶんこの性格の不一致は、読書のフィードバックサイクルに起因する。

 

 人が本を読むとき、物語の全場面を一言一句認識することは不可能だから、読み手は要約やら切り取りやらをしてデータを圧縮し、その上で記憶しやすいようになんらかの意味づけをすることになる。つまり解釈というものだ。こういう風にして、本は読み手に物語を提供するけれど、厄介なのはその物語が現実世界の読み手のあり方まで変えてしまう力を持っているところにある。読み手が変われば当然、解釈も変わる。つまり読書という営みは解釈と人格変更の絶え間ないループで、現実世界の自分が変わってゆくと同時に、想像の世界も刻々とパーソナライズされてゆくわけだ。このサイクルを繰り返すほど、現実世界でのほんの些細なギャップがどんどん大きなものになってゆく。僕たちのメタバースっていうのは奥に進めば進むほど、各層の色合いが濃くなって、しかもバラバラだ。

 

 つまりさ、何が言いたいかって、現実世界で君と会いたいんだよ。いくら君と同じ本を読んだって、むしろ君は遠ざかってしまうんだよ。

 

 君はいま限りなく透明に近いブルーで、僕はすこし俗っぽいライトブルーだけど、どの色を合わせたって君の色には辿り着かない。どんどん鈍く澱んだ色になっていって、遠くの街並みが全てぼんやりとした灰色に見えるように、君の世界から僕が見えなくなってしまうんだろう?

23歳、夏。

やばい、いまさら思春期に突入した。自意識が爆発する。
ときどき自分の存在が他人にとって大きいものなんじゃないかと思ってしまうけど、それなら自分の思い通りに事は進んでいくはずだし、表面的なものを見て誤解せず俺に正面から向き合ってほしいけど、俺の心はむき出しのまま人に見せられるほど綺麗なものじゃないことを俺は知っている。そういう色々な感情が俺を好き勝手に引っ張るから、かろうじて心を包みこんでいた経験とか教育とか知性とか、全部はじけて飛んでいきそうだ。